メニュー:組織変革のための実践プログラム
期間:28ヶ月(現在も継続中)
概要:国内最大手IT企業の新規事業部へ新人育成プログラムの導入、組織活性のためのアプローチを行う
マホラ・クリエイティブ独自のビジネス思考実践プログラムで若手メンバーの確実な成長を促す
ーどのような経緯で依頼を受けたのでしょうか?
この企業様は国内最大規模の大企業でその中に新規事業部があります。また、その部署と別に新規事業部をサポートする部署があるのですが、その部署の手が回らなくなり、外部にサポートを依頼をしようということで以前から面識のあったご担当者様からお話をいただいたのが最初のきっかけになります。そこからヒアリングをさせていただき、まずは部署の課題など現状を把握するところからはじめていきました。
ー新規事業部ではどのような課題を持っていたのでしょうか?
当時、部署が発足して3年が経っていましたが、新規事業部としての成長に頭打ちしている状態でした。
これは、マホラ・クリエイティブに相談される多くの企業の新規事業部に当てはまることなのですが、大体3年で組織の危機が訪れます。1年目は部署を立ち上げてとりあえずなんでもやってみる。組織もやることが大事ということで寛大です。2年目は、1年目で手が届かなかったことに手を出してみる。最初は割と行き当たりばったりでもなんとなく前進できてしまうんです。
しかし、3年目になると経営層から成果を求められます。ですが、蓋を開けてみれば目に見えるような成果は何もない。さらに、立ち上げ当初のメンバーはその状況に飽きたり、居心地が悪くなり、離脱して組織が発展していくための力がなくなってしまう悪循環になっていきます。
そのような最悪のケースまでは悪化していないものの、この企業様も3年の壁にちょうど直面している時期でした。
ー多くの新規事業部が壁に当たる共通の課題なのですね。そこに対してどのようにアプローチしたのでしょうか?
組織側でも、今お話ししたような課題が理解できるものの、実は最初から課題解決のための組織変革に着手できるわけではありませんでした。もちろん、大企業の組織変革をいきなり初発注の外部のコンサルタントに依頼するのはリスクですから当然です。
その代わり、若手の育成に手が回っていないのでそこを担ってほしいという依頼をいただき、新規事業部の若手育成プログラムの導入から着手することになりました。
ー若手育成プログラムはどのような内容だったのでしょうか?
特に大企業の方は知らない事実なのですが、実は、新規事業をどのように進めればうまくいくのかは、20年ほどの年月の中で一般的には型ができていて科学的に説明ができる状態まできています。しかし、その使い方や考え方を根本的に理解していないとこの型は使いこなせません。
そのため、ビジネス思考において重要な考え方や思考の順番など、新規事業部の若手メンバーのフェーズに必要な項目をピックアップしレクチャーを行いました。
このプログラムは、マホラ・クリエイティブ独自のビジネス思考の実践プログラムに基づいており、各企業様ごとにアレンジをして提供します。今回は2〜3時間の講義を計5回行いました。また、各メンバーの壁打ちを行う中で講義だけでは足りない部分を補ってお伝えしていきました。
ープログラムを実施して、若手の方にはどのような変化がありましたか?
プログラム導入から1年で若手たちはビジネス思考という大きな武器を手に入れたことにより、新規事業立案に自信が持てるようになりました。その結果、確度が高いといえるような新規事業がいくつか生まれるようになりました。
プログラムで若手に変化が生まれる一方、実は、マホラ・クリエイティブが特に意識をしていた領域なのですが、評価をする側である中堅幹部の方たち、いわゆる「変化させる側」にも大きな変化があったんです。
ー評価をする方たちにも。どのような変化があったのでしょうか?
彼らの新規事業に対する考え方の変化です。
ご依頼をいただいた当初、現場の推進者は若手育成の他に「新規事業の提案が評価している人たちに正当に理解してもらえていない気がする」という課題も抱えていました。若手育成を進めながら同時にこの課題も解決できないかという相談を受けていたんです。
新規事業部では、メンバーが企画した事業を発表し評価する立場にある中堅幹部がフィードバックをする審査会が定期的に開催されています。それまでの審査会では、できていない部分に目を向け、重箱の隅をつつくようなフィードバックが行われていました。
また、審査基準や検討内容がクローズになっていて何をしているの分からない不透明さを孕んでいました。さらに、具体的な改善案も示されないまま終わってしまうこともしばしば。その状況を見て、新規事業に対する組織全体の考え方自体が社内で良い新規事業が生まれていかない原因の一つでもあると感じました。
変化する側でなく、変化させる側が変化できるか
ー組織全体の意識の変革に向けてどのようにアプローチしていったのでしょうか?
審査会の場に私も参加させてもらい、審査メンバーと同じ並びで発案者にフィードバックをさせていただくことにしました。事業メンタリングにも実はマホラ・クリエイティブならではの培われたポイントがあります。具体的には、
- リスクを見て本当に危ないところを指摘する(危ないところをしっかり丁寧に伝える)
- 審査会での評価基準に満たしている部分を明らかにする(良いところを正当に、素直に褒める)
- 基準に満たない部分について次の審査会までに何をすべきかを検討する(次のステージに押し上げる姿勢を持つ)
この三つの要素において平等に時間を使うのが事業メンタリングの正しいやり方です。審査ではあるのですが、成功確率を上げて成果を共に達成する仲間でもあるということを明確に伝えることが大切です。これらを「問い」を活用して進めていきます。
私が審査に加わると、今までのフィードバックの時とは明確に違う発案者のリアクションが返ってきました。審査会の中で私が何度かフィードバックを続けていると、そのリアクションと反応の違いに審査する側の方々も徐々に気づき始めていきます。
いつもと違うメンバーの良いリアクションを見て、「自分たちがやってきたフィードバックはもっと改善できるのではないか?」と評価者の中で価値観の変革を起こすための学習が生まれていったんです。フィードバックする側も新規事業のフィードバックは未経験です。でも、彼らは立場的に「わからない」「合っているか不安だ」とは絶対に言えないんです。
また、一方で、「自分のやり方は間違ってはいないだろう」と進んできた自負も持っています。それは彼らのある種の存在意義でもある。それは大切なものです。そのため、フィードバックの型を外部から押し付けるのではなく、無意識的に自らの学習と発展の場となるようなアプローチをしていきました。つまり、無意識的に学習が起こり、私の知識が伝承されていったのです。
多くの場合、組織は、「変化させる側」がいて、変化を望みます。しかし、組織が代わり成長していくのは、この「組織を変化させたい」と思っている変化させる側の意識が変容することこそが最も大事なことだったりします。
ーどのような結果になったのでしょうか?
私がご支援した1年半で、事業を見る視点が劇的に変わっていきました。今まではダメなところばかり指摘をしていた中堅幹部が評価の際に良い点を褒めるようになり、基準に則って適切に指摘した上で課題を一緒に考える姿勢に変わっていきました。
その視点は審査会だけでなく、日々のメンバーとの議論にも落とし込まれるようになり、フィードバックがメンバーのモチベーションをあげ、確度の高い新規事業が生まれ始めるという良い循環が生まれ始めました。
変化をさせる側であるメンバーは「育成プログラムを通して若手の意識がすごく変わった」と言ってくださるのですが、私から見ると一番変わったのは彼らそのものでした。
つまり、若手たちの立案のレベルが上がったことと、幹部たちの評価の視点が的確になったことにより、お互いの視座が揃ったんです。ここで初めて、正しく評価する・されるということが成り立つようになったことがこの良い循環の起点でした。
ー現在も継続してご支援されているということですが、今後はどのような組織のフェーズを目指しているのでしょうか?
この良い循環が続いていくと、5年後にはかなり力のある新規事業部として成長しているのではないかと思います。実は、この事業部をモデルにして、さらに上位の組織を変革する動きが出ています。彼らはモデルケースとなり、他部署の支援をするところまで組織内で注目され始めています。5年後には、彼らが牽引役となり組織全体を巻き込んで、学習する組織に生まれ変わる期待があります。
今回ご紹介した事例は「Maho-laメニュー構造」の【3】組織変革のための実践プログラムです。